「親知らず」の抜歯について
「親知らずを抜歯した」という話は身近に耳にしますね。しかし、自分には関係ない、と思っている方も多いのではないでしょうか。実は、本来は親知らずを抜歯すべきなのに、抜歯していない・受診もしていないという方は、意外に多く存在します。
親知らずを抜歯すべきケースで抜歯していないと、お口の中にさまざまな悪影響を及ぼしてしまいます。
すでに痛みや腫れといった症状が現れている方はもちろんですが、抜歯の必要があるのかどうか分からないという方も、お気軽に当院にご相談ください。症状がなくても、抜歯をした方が将来的なメリットが大きいということがあります。
親知らずは抜いた方がいい?抜かない方がいい?
抜歯をおすすめする場合
親知らずが虫歯になっている
親知らずは、前歯から数えて8番目、一番奥に生えている歯です(生えてこない方もいます)。程度の差こそあれ、基本的に「磨きにくい歯」となるため、虫歯リスクが高くなります。セルフケアの改善の余地がない(物理的にどうやっても磨きにくい)場合などには、虫歯治療を行っても再発する可能性が高いため、抜歯をおすすめします。
歯並びを乱している
親知らずが横向き・斜めに生えるなどして、隣の歯を押し、歯並びを乱すことがあります。放置しているとドミノ式に歯並びが乱れることもあるため、抜歯をおすすめします。
手前の歯の根を溶かしている
親知らずが横向き・斜めに生えると、その手前の歯の根の吸収が進んでしまうことがあります。手前の歯の寿命を短くしてしまう可能性が高いため、親知らずの抜歯をおすすめします。
腫瘍・嚢胞の原因になっている
親知らずを原因として、腫瘍や嚢胞が生じている・生じる可能性が高い場合には、抜歯をおすすめします。
抜歯をおすすめしない場合
親知らずがまっすぐ生え、虫歯や歯並びの乱れ、腫れ・痛みの原因になっていない場合には、基本的に親知らずを残すことをおすすめします。親知らずも噛むという機能を支える歯であることには変わりありませんので、むやみに抜くということはありません。
親知らずの抜歯は痛い?
抜歯時の痛みの種類
【局所麻酔】注射を打つときの痛み
親知らずは、歯茎に局所麻酔をかけた上で抜歯します。まず歯茎を部分的に痺れさせるシールタイプの表面麻酔をかけてから、注射麻酔を打つという手順です。
なお、注射針によってわずかに歯茎が損傷することになるため、損傷が治癒するまで、痛みも1~3日ほど持続します。ただ、抜歯後には痛み止めを処方しますので、ほとんど心配いりません。
【抜歯中】麻酔が効いていない痛み
抜歯中、麻酔が十分に効かず、痛みを感じることがあります。体質もありますが、相対的に下顎の抜歯の際に起こりやすい痛みです。
注射麻酔を追加することができますので、すぐ、歯科医師にお伝えください。
【抜歯後】ドライソケットによる痛み
通常、親知らずの抜歯後は、その穴に血が溜まり、固まることで傷が落ち着きます。ただ、舌や指で固まりかけた血液を剥がしてしまったりうがいを過度に行う等して、穴の奥の骨が露出したままとなる「ドライソケット」が起こることがあります。
ドライソケットが起こった場合には、すぐに受診していただき、治療を行う必要があります。
なお、ドライソケットがない場合も、痛みは2~3日続きます。こちらについては、予め処方する痛み止めで十分に対応できます。
親知らずの抜歯は上と下どちらが痛い?
注射麻酔は、上顎の方が効きが良くなります。これは、上顎の骨の方が、下顎の骨よりも麻酔液が浸透しやすいために生じる違いです。
上顎の親知らずの抜歯の方が、下顎の親知らずの抜歯よりも、抜歯時の痛みは少なくなると言えるでしょう。
親知らず抜歯後、痛みはいつまで?
親知らずの抜歯後、ほとんどのケースにおいて、1~2日くらいで痛みが引きます。そして、3日目には、痛み止めが必要なくなるほど落ち着きます。
ただ、中には1週間以上痛みが続くというケースもあります。
痛みが長引く、痛み止めが効かないくらい痛いといったときには、ご連絡ください。
親知らずの抜歯後おすすめの食事
治療直後~当日
麻酔の効果は、抜歯後2~3時間残っています。またこの間は少しの刺激で出血が起こりやすくなっているため、お食事をお控えください。
その後も当日中は、固まりかけた血液が剥がれたりしないよう、やわらかい食べ物を食べましょう。硬い物は当然ですが、刺激物も避けましょう。
おすすめなのは、以下のようなメニューです。
- おかゆ、玉子雑炊
- やわらかく煮込んだうどん
- 具をやわらかくしたスープ
- ヨーグルト、プリン、ゼリー
- すりおろしたリンゴ
- 栄養補助ゼリー
治療後2日目
治療後2日目も、まだ傷口は安定していません。ただ、抜歯したのとは反対側の顎を使えば、ほとんど通常通りの食事が可能です。
おすすめなのは、以下のようなメニューです。
- やわらかく煮込んだ麺類
- リゾット
- 蒸しパン、食パン
- 野菜の煮物、野菜炒め
- 魚の煮物、刺身
- 豆腐
- 半熟玉子
治療後3日~
3~4日が経過すれば、患部が傷つく可能性のある食べ物(せんべい、骨つき肉、大きな骨の魚など)を避けた上で、刺激物を含め、通常通りの食事に戻せます。
ただ、いずれの段階においても治癒の程度には個人差がありますので、そのときどきで歯科医師からの指示に従っていただきますよう、お願いします。